2014/05/31

David Kelley: How to build your creative confidence





今日はクリエイティビティに対する自信についてお話しします。オハイオ州バーバートンの小学3年生だった頃の昔の話から始めましょう。親友のブライアンが創作に取り組んだ時のことを今でもよく覚えています。先生が洗面台の下に置いていた粘土を使って馬を作ろうとしていました。すると同じテーブルにいた女の子がのぞき込んで言ったのです。「なによそれ? 全然馬に見えない」。ブライアンは肩を落としました。そして粘土の馬を丸めると、粘土入れに投げ戻しました。その後ブライアンがそのような創作に手を出すことは二度とありませんでした。

こんなことがどれほど頻繁に起きていることかと思います。ブライアンの話をすると、多くの学生が授業の後にやってきて、似たような体験をしたと言います。先生にやる気をなくさせられたとか、他の生徒から残酷な仕打ちを受けたと。そしてそのために自分にはクリエイティブな才能はないと諦めてしまう人がたくさんいます。子ども時代にそんなことがあって、そのまま心に染みついてしまい、大人になってもそう思い続けるのです。

そういったことをよく目にします。ワークショップを開いたり、クライアントと一緒に取り組んでいて、何か漠然とした型から外れた状況になることがあります。すると、そこにいたお偉方の誰かが携帯電話をさっと取り出し、すごく大事な用件があるんだと言って部屋を出ていこうとします。あまりに居心地が悪かったのです。追いかけていってどうしたのかと聞いてみると、「自分はクリエイティブなタイプじゃないんだ」みたいなことを言います。そんなことないのは分かっています。正しいやり方に則ってやり通せば、すばらしいものを作り上げ、自分や自分のチームがいかに革新的であるか自らを驚かせることになるはずです。みんなが抱えているこの評価への恐れを私はずっと見てきました。評価されることを恐れるあまり、やること自体を止めてしまうのです。気の利いたクリエイティブなことを言えないと軽蔑されてしまうと。

心理学者のアルバート・バンデューラに出会って私は大きな展開を迎えました。みなさんバンデューラをご存じかわかりませんが、Wikipediaを見ると、彼が歴史上4番目に重要な心理学者だと書いてあります。フロイト、スキナー、誰かと、バンデューラです。バンデューラは86歳ですが、今でもスタンフォードで研究しています。すごくいい人ですよ。会いに行ったんです。私がとても興味を持っている恐怖症について彼が長年研究していたからです。彼はある手法を開発していました。ごく短時間に人の恐怖症を治せる方法です。ほんの4時間で、恐怖症をとても高い確率で治せるんです。

ヘビの話をしました。なんでヘビの話になったのか分かりませんが、ヘビとヘビに対する恐怖の話をしたんです。すごく楽しくて面白い話でした。彼は被験者を呼ぶと、「隣の部屋にヘビがいます。これからそこに行きましょう」と言うんです。たいていの人は、「とんでもない、行きませんよ。ヘビがいるんだったら絶対に」。と答えます。しかしバンデューラは段階的な方法で高い成功率を誇っています。まずはマジックミラー越しにヘビのいる部屋を覗いてそれに慣れさせます。それからいくつもの段階を経て、開いたドアの前に立って中を見させます。それにも慣れたら、さらにいくつもの小さなステップを踏んで部屋に入り、溶接工がはめるような革手袋をつけてヘビに触れさせます。ヘビに触れたら万事OKです。恐怖は克服されます。そればかりか、これまでずっとヘビを恐れていた人たちが、「このヘビ、なんてきれいなんだろう」などと言い、膝の上に乗せたりするのです。

バンデューラはこのプロセスを「案内付きの習得」と呼んでいます。好きな言葉です。「案内付きの習得」。それから別の効果もあります。この過程を経てヘビに触った人たちは、他のことについてもあまり不安を持たないようになるのです。より熱心に粘り強く取り組み、失敗に直面しても簡単にへこたれないようになります。新たな自信を手にしたのです。バンデューラはこれを「自己効力感」と呼んでいます。身の回りの世界は変えられる、やろうと思ったことは達成できる、という感覚です。
バンデューラと出会って、私はカタルシスを覚えました。この高名な心理学者は、私が30年間ずっと目にしてきたことを記録し、科学的に証明していたからです。自分はクリエイティブじゃないという恐れを持った人たちが、段階的なステップを踏んで小さな成功を積み重ねることで、恐れていたものに馴染み、自分で驚くほど変わるのです。この変化は目を見張るばかりです。そういうことをd.schoolでいつも目にしています。様々な分野に自分はもっぱら分析的な人間だと思っている人たちがいます。そんな人たちがこのプロセスを経ると、自信を築き、自分を違ったように捉えるようになります。そして自分がクリエイティブな人間だと思えることに、すっかり夢中になります。

今日はみなさんにその道のりがどんなものかお話ししたいと考えていました。ちょうどダグ・ディーツが辿ったような道のりです。ダグは技術的な人間です。大型医用画像装置の設計をしています。GEで働いている素晴らしい業績の持ち主です。しかしある時危機に直面しました。病院で自分のMRI装置が使われているところを見たのです。小さな女の子が怖がって泣いていました。小児患者の8割はMRIを受けさせる時に鎮静剤を使わなければならないと知って、彼はショックを受けました。自分の仕事に誇りにしていた彼にとって、それはすごくがっかりすることだったのです。自分の機械は人の命を救っていると思っていたわけですから。それが子どもたちに与えている恐怖を目にして心を痛めたのです。

その頃、彼はスタンフォードのd.schoolで授業を受けていて、デザイン思考、共感、反復的試作といった過程について学んでいました。ダグはその新しい知識を使ってすごいことをしました。スキャンを受ける体験全体をすっかり変えてしまったのです。彼の作り出したものがこれです。子どものための冒険に変えたのです。装置や部屋の壁いっぱいに絵を描き、オペレーターも、子ども博物館の職員のような子どもをよく知っている人たちに手ほどきしてもらいました。子どもたちが来たら、船の騒音や振動の話をします。そして言うのです。「さあみんな、これから海賊船に乗るからね。でもじっとしていて。海賊に見つからないように」

結果は劇的なものでした。8割の子どもたちに鎮静剤が必要だったのが1割に減りました。病院やGEも大喜びです。何度も麻酔医を呼ぶ必要もなくなり、一日にずっと多くの子どもを診断できるようになりました。量的に大きな成果です。しかしダグがより気にかけていたのは質的な面です。女の子がスキャンから出てくるのを母親と一緒に待っていたときのことです。出てきた女の子が母親に駆け寄って言ったのです。「ママ、明日もここに来ていいよね?」(笑) ダグがこの個人的変容と、それから生まれた革新的なデザインの話をするのを何度となく聞きましたが、この小さな女の子のくだりで彼はいつも涙を浮かべています。

ダグの話で病院が出てきましたが、病院については私も少しばかり知っています。数年前、首の横にしこりを感じてMRIを受けることになりました。腫瘍でした。それも悪性の。生存率は40%だと言われました。パジャマを着て、他の患者たちと一緒に待機していました。みんな痩せて青白い顔をしています。ガンマ線照射を受ける順番を待ちながらいろんなことを思いました。たいていは「生き延びられるだろうか?」ということです。それから、自分がいなくなったら娘はどうなるだろうと思いました。それからこんなことも考えました。自分が地上に残したものは何だろう? 自分の使命は何だったのか? 私は何をすべきなのだろう? 幸い私にはたくさんの選択肢がありました。IDEOでは医療や健康、学校教育、発展途上国のためのこともしています。だから取り組めるプロジェクトはたくさんありました。しかしこの時私は自分が一番やりたいことに打ち込もうと決めたのです。できるだけ多くの人がクリエイティビティに対する自信を取り戻せるよう手助けするということです。生き延びることができたらそういうことをしたいと思いました。ちなみに言っておきますと、私は生き延びることができました。(笑いと拍手)

人々がこの自信を取り戻したとき、それをd.schoolやIDEOでいつも目にしていますが、彼らは自分の人生で本当に大切なことに取り組むようになります。それまでやっていたことをやめて、新しい方向に踏み出すのです。より興味深いより多くのアイデアを考え出すことで、より良いアイデアの中から選べるようになるからです。そしてより良い決断を下すのです。TEDではみんな世界を変えようとしていて、世界を変えるものを持っていますが、私にそれがあるとしたら、この変化を起こす手助けをすることです。思想的リーダーである皆さんにもこの試みに加わっていただけたらと思います。生まれつきクリエイティブな人とそうでない人がいるという考えを止め、みんなに天賦のクリエイティビティがあるのだと気付いてほしいのです。そうすれば彼らはアイデアを自由に飛翔させるようになります。バンデューラの言う自己効力感をみんなが手にすべきなのです。やろうと思ったことは実現できる。自分のクリエイティビティに自信を持って、そしてヘビに触るのです。ありがとうございました。
http://goo.gl/79ukz8
セルフエフィカシー

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