それはおじいさんがつけていた帳簿である。
大家族を養うのに戦後、行商を始めた。店舗はなかった。
何もないところからスタートしたそうだ。
反物や繊維製品を近くでの同業者の方から仕入れていた。
だから仕入れは高く、販売価格も割高だった。
でも、おじいさんには「理念」があった。正直さという「理念」だった。
だからお客様に信頼され、顧客を獲得できた。いまでも、当時の顧客は私の店舗に足を運んでくださる。
父は、中学からおじいさんお手伝いをした。自転車で、10キロ先の顧客のうちまで、定期的に足を運んだ。
それから、おじいさんは仕事を探している人のお世話もしたそうだ。
「しょいこ」と呼ばれる方のお世話である。
商品の手当てや売り方などもアドバイスしたらしい。
今で言うコンサルタントのようなものだ。
両親の世話焼きは、先祖から伝わるものだが もれなく私も姉も引き継いでいる。
創業するときにスポンサーになった方が近所にいる。
資本金を貸してくれたのである。
様々な偶然によって、私がこの帳簿と対面することを おじいさんは知っているのだろうか?
私にも帳簿がある。小売伝票だ。時代は変わっても 変わらないこともあるし、変えてはいけないこともあると思う。
私は「信用」や「正直さ」はあるだろうか?あまり自信がない。
でも、学び お客様に満足行くサービスをしてゆくには どうすべきか手探りで進んでいる。

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