2014/11/17

太古から珍重されていた亜麻仁油(あまに油)

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亜麻仁油(あまにゆ)とは? 
●基本情報 亜麻仁油とは、亜麻の種子から抽出される油のことをいいます。必須脂肪酸[※1]であるα-リノレン酸やリノール酸を豊富に含んでいます。

亜麻とは、中央アジア原産のアマ科アマ属の一年草で、春から夏の間に小さな青紫色から白色の花を咲かせます。亜麻の種子を亜麻仁、種子から採れる油を亜麻仁油といいます。

亜麻は比較的寒い地方で栽培され、日本では北海道が最も栽培に適した土地だといえます。茎の部分は繊維が豊富で、リンネル(リネン)製品として使用されます。

亜麻の繊維は、麻よりもやわらかく丈夫で、通気性、吸湿性に優れています。肌触りも良いことから、高級な衣類などに使用されています。

また、フランス語では、ランと発音され、女性の下着をつくるための繊維として使われていたことから「ランジェリー」という言葉は高級繊維を使用した女性の下着に由来しているといわれています。

亜麻仁油は、食用とされるほか、油絵具のバインダー[※2]や木製品、皮革の仕上げとして使用されています。また、卵の代用品としてケーキなどの焼き菓子にも利用されており、卵アレルギーを持つ方や、ベジタリアン志向の方に好まれています。

また、亜麻仁油が含まれる亜麻種子には、豊富な食物繊維が含まれているため焼き菓子などに亜麻種子をそのまま用いたり、ソースに混ぜて使用されます。 

●亜麻仁油の歴史 亜麻の歴史は非常に古く、紀元前3000年~2000年頃には、古代エジプトで栽培されていました。

古代ギリシャでも亜麻仁油が健康をもたらすものとして認められていたといわれています。 亜麻仁油は、世界最古の健康食品といわれており、古代ギリシャの医学の父と呼ばれたヒポクラテス[※3]が亜麻種子を食べると胃腸の不快を解消するとして、亜麻栽培を推奨していたといわれています。

1690年には、日本に亜麻仁油が中国から薬用油として伝わってきました。この頃、中国から比較的容易に亜麻種子が入手できたため、国内での栽培は定着しませんでした。

明治初期、トーマス・アンチセルの提言により、当時のロシア特命全権大使である榎本武揚が採繊技術を導入し、北海道での亜麻栽培がスタートしました。

しかしこの時の栽培の目的は、繊維の採取であったため1960年代の化学繊維の台頭に伴い、1967年を最後に北海道から亜麻は姿を消したのです。

近年、亜麻仁油の健康効果が明らかになってきたため、亜麻仁油を採取する目的で、亜麻の栽培を再開させました。 

●亜麻仁油の性質とその成分 亜麻仁油は、油にしては珍しく、水と乳化[※4]することができるため、ケーキなどに使用される卵の代用品として利用されています。

亜麻仁油は、酸化[※5]スピードが非常に速いため、一度開封すると短期間で使い切る必要があります。また、熱に弱いため、ドレッシングとして使用したり、そのまま飲んだりと熱を加えずに使うことが推奨されています。

亜麻仁油には、必須脂肪酸のω(オメガ)-3系のα-リノレン酸と、ω(オメガ)-6系[※6]のリノール酸が含まれており、亜麻仁油の約60%はα-リノレン酸だといわれています。

これらの成分は、体内で合成することができないため、食品からの摂取が必須とされています。 α-リノレン酸は、脳や網膜のリン脂質[※7]に含まれている成分で、体内に入ると青魚に含まれている油であるDHAやEPAに変換されます。

血流の改善や血栓の予防、血圧を下げる働きがあります。不足すると脳や神経、皮膚などに異常が現れるため、人間にとって必要不可欠な成分といえます。 

人間の体は約60兆個の細胞からできています。その細胞ひとつひとつに、「細胞膜」と呼ばれる細胞の内外を隔てる膜が存在します。

この細胞膜があることによって、細胞は内部環境を一定に保つことができます。 人間にとって非常に大切な細胞を守る役割をしているのが細胞膜です。

この細胞膜を構成しているαリノレン酸などのn-3系成分が不足することで、細胞膜がしっかりと構成されず、老化の促進にもつながります。 亜麻仁油にはα-リノレン酸が含まれているため、細胞膜を健康に保ちます。 

また、リノール酸は体内に入るとγ(ガンマ)-リノレン酸に変換され、生活習慣病の予防やアトピー性皮膚炎の改善などに役立つとして知られています。 また、亜麻仁油にはリグナンという物質を豊富に含んでいます。 

[※1:必須脂肪酸とは、体内で他の脂肪酸から合成できないために食品から摂取する必要がある脂肪酸のことをいいます。]

[※2:バインダーとは、物と物を接着させる物質のことです。]

[※3:ヒポクラテスとは、古代ギリシャの医者で、これまで医学とされていた迷信や呪術を切り離し、医学を経験科学へと発展させた人物です。]

[※4:乳化とは、水が油に溶けている、もしくは油が水に微粒子となって溶けている状態のことです。]

[※5:酸化とは、物質が酸素と化合し、電子を失うことをいいます。サビつきともいわれています。]

[※6:ω(オメガ)-6系とは、脂肪酸構造の中に炭素の最初の二重結合が、6つ目と7つ目の炭素の間にあり、n-6系脂肪酸とも呼ばれています。]

[※7:リン脂質とは、細胞膜を構成する主要な成分です。体内で脂肪が貯蔵・運搬される際に、たんぱく質と結び付ける役割を持っています。情報伝達にも関与しており、人間にとって必要不可欠な成分です。]

亜麻仁油(あまにゆ)の効果 

●血流を改善する効果 亜麻仁油に含まれているα-リノレン酸には、血管をしなやかにして血行を改善する働きがあります。 心疾患や脳疾患の原因である血栓に対しても効果があり、血小板[※8]の凝集を抑えるなどの働きも知られています。【9】 

●生活習慣病の予防・改善効果 亜麻仁油に含まれているα-リノレン酸などのω(オメガ)-3系には、コレステロール値や血圧を下げる働きがあります。これらの上昇が動脈硬化や高血圧などの生活習慣病につながるため、亜麻仁油には生活習慣病を予防・改善する効果があるとして期待されています。【1】【2】【3】【4】 

●記憶力や学習能力を高める効果 亜麻仁油に含まれているα-リノレン酸は、体内に入ると同じω(オメガ)-3系の油であるDHAやEPAに変換されます。DHAは、脳や神経に密接に関係しており、不足することで異常が現れることで知られています。 神経細胞を活性化し、情報伝達をスムーズにし、脳機能を活性化させることで、記憶力や学習能力を高める効果もあります。【6】【7】 

●美肌効果 亜麻仁油とボラージ油を摂取した女性で肌質改善作用がみられました。亜麻仁油は、α-リノレン酸を豊富に含み、皮膚からの水分蒸発や肌荒れなど肌質改善に有益であるといえます。【8】 

●アレルギー症状を緩和する効果 亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸には、アレルギー症状を緩和する効果があります。 アレルギーの原因のひとつとして、リノール酸の過剰摂取があります。 リノール酸とは、n‐6系の必須脂肪酸のひとつで、血中コレステロール値や中性脂肪値を一時的に低下させる働きがあります。その一方で、摂りすぎるとアレルギーを悪化させたり、大腸ガンの危険性を高めたりと体にとって良くない影響ももたらします。 α-リノレン酸は、リノール酸に対して競合的に働くため、亜麻仁油はアレルギーに対して有効的な成分であるといえます。【5】 

[※8:血小板とは、血液に含まれる細胞の一種です。血管が傷ついた時に集合体になり、止血する役割を持ちます。] このページのトップへ 亜麻仁油(あまにゆ)は食事やサプリメントから摂取できます 亜麻仁油の成分は水に溶けやすく熱に弱いのでサラダにかけてドレッシングとして食べることがおすすめです。

亜麻仁油を含む食品 ○亜麻種子 こんな方におすすめ ○血流を改善したい方 ○生活習慣病を予防したい方 ○アレルギー症状を予防したい方 ○記憶力が気になる方

亜麻仁油の研究情報
 【1】閉経後の女性36名を対象に、亜麻仁を1日40g、 カルシウムを1日1,000mg、 ビタミンDを1日400mg 3ヶ月摂取させたところ血漿コレステロール、アポリポタンパク質が減少しましたが、骨形成と骨吸収には変化がありませんでした。アマニは閉経後の女性の血中コレステロールの上昇を抑制することが認められました。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11932276 

【2】閉経後の女性101名を対象に、アマニを1日40g 、12ヶ月間摂取させたところ、アマニ摂取によって、総コレステロール及びHDLコレステロールが減少し、骨ミネラル量には変化がありませんでした。アマニは閉経後の女性の血中コレステロールを減少させるはたらきが確認されました。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12771324 

【3】軽度高血圧男性患者44名において、亜麻仁油を1日60mL 、2週間摂取させたところ血中のα-リノレン酸が増加し、総コレステロール、LDLコレステロール、LDL/HDL比や血中トリグリセリド、及びLDLコレステロールの生成に関係する酵素、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の量が減少したことから、亜麻仁油には高コレステロール血症を予防し、動脈硬化予防作用があることが確認されました。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1972963

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