Raffaello
1511~12年。カンヴァス 油彩 320×194㎝
Pinacoteca Vatican,Roma
ラファエルロの聖母際壇画の構成は、驚くべき確かなテンポで進んでいる。
本当はこの間に<天蓋の聖母>をいれれば、この一貫性が分かるだろう。
彼は、フラ・バルトロメ-オのモニュメンタルな正統的祭壇画から、レオナルドに劣らぬほど強い本質的な感化を受けた。
それは、フィレンツェの宗教画のなかでも もっともフィレンツェ的なタイプであって、中央高い玉座に聖母子、左右に対象的に聖人を配し、彼らは観者に向ってと同様、彼らの相互の間で眼差しと動作による「聖なる会話」を交わす。
モニュメンタルな碧眼(へきがん)を背にしてそれが描かれるのがバルトロメ-オなどサヴォナローラ派の画家の特徴だが、一方では天上と地上を分割してしまう形式もあって、特に北イタリアではこれが発達していた。
ラファエルロはローマでこれらの宗教画家ととも交わり、フィレンツェが知らなかった新たな幻想的要素をここに採り入れている。
下半分はバルトロメ-オ風の対称的な聖会話図であるが、上には光と雲と天使という法説的なビジョンにつつまれて聖母が宙に上がっている。
構図は完全な8の字形で、まなざしの交換で上下の交流はスムーズに行われており、フリードバーグはこの先品を美的に否定しているが、マドンナ像のバロック的局面を示唆するものとしては欠くことのできない重要作と私は思う。
抜粋 >
書籍 ラファエルロ
著者 若桑 みどり氏
新潮社文庫
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